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定款変更に反対した株主の株式買取請求権が失権した例 2013/2/4
 

普通株式を全部取得条項付種類株式に変更する定款変更に反対して、会社法116条1項に基づく株式買取請求をした株主が、当該全部取得により株式を失った場合、株式買取請求権は失権する。(最高裁第二小法廷決定平成24年3月28日)


<はじめに>

 上場会社である会社の株式を全部買い取って同社を100%子会社とするM&Aにおいては、会社法で用意している株式交換により行おうとすると、株主総会で特別決議により株主の3分の2の賛成を得る必要があるので、上場企業の場合にとって、実行はきわめて困難である。
そこで、公開買付により多数派株主となって株主総会の特別決議である3分の2以上の賛成を得られる状態にしたうえで、100%子会社実現に向け、次の手段に移ることが多い。
その手段としては、株主総会で定款変更をして、
@A種種類株式(多くの場合、残余財産分与優先権付株式とし、優先権は1円だけ高く分与を受けられるとする)を発行できる
A普通株式を全部取得条項付種類株式とし、対価としてA種種類株式を交付するが、その際、交付割合は端株になるようにする。
かかる定款変更とあわせ、同じ株主総会で、全部取得の効力発生日を定める。
その上で、全部取得を実行後、反対者の有する端株を買い取って、100%の株式取得を実現する。これはいわゆるスクイーズアウトと言われるものである。
この方法は定款変更で解決するものなので、債権者の異議手続きを経る必要はなく、会社実務としては使い勝手の良いものである。


<本件事案>

 甲社は大阪証券取引所2部上場の会社である。株券は不発行だったので、株式は「社債、株式等の振替に関する法律」(社振法)所定の振替株となっていた。
乙社は、甲社の株式の全てを取得して、同社を100%子会社化することを計画した。そこでまず甲社に対して、2009年2月17日から同年3月17日までを買付期間とする公開買付を実施した。その結果、A社の株式1,008万0085株(自己株式を除く発行済株式総数の約86%)を取得することが出来た。
甲社は同年3月31日を基準日として、同年6月29日、株主総会を開催した。そこで、以下の通りに定款を変更する旨の特別決議による賛成を得た。
@残余財産分配優先権(優先権は1円だけ高く分配を受けられる)を有するA種種類株式を発行することが出来る。
A普通株式を全部取得条項付種類株式とし、対価としてA種種類株式を全部取得条項付株式1株につき、0.000000588株の割合で交付する。
この定款変更に加え、同じく特別決議で次の議決を得た。
B定款変更の効力発生日と全部取得条項付種類株式の取得日を、同年8月4日とする。


<Xの対抗手段>

 ]1は、2009年7月11日、甲社の株式7万3000株、X2は8万7000株について、会社法172条1項に基づき、全部取得条項付種類株式の取得価格決定の申し立てを、裁判所に提起した。
さらに同年7月30日、会社法116条2項に基づき、X1は保有する44万1000株、X2は29万5000株について、公正な価格に基づいて買取ることを甲社に請求し、同年9月30日、会社法117条2項に基づき、裁判所に価格決定の申し立てをした。


<甲社の反論>

 2009年7月29日、Y社は上場廃止となり、同年8月4日、振替機関による取り扱いが廃止された。しかし、Xらは、取り扱い廃止までに社振法154条3項所定の「個別株主通知」の申し出をしていなかったので、かかる通知は為されていなかった。
そこで、Y社は、「個別株主通知」がなされていないことを理由に、本申立が不適当と主張した。
また、同年8月4日、定款変更の効力が生じるとともにY社は全部取得条項付種類株式の全部を取得した。そこでY社は、Xらはかかる種類株式を所持していないこととなったので本申立の根拠を失ったと主張した。


<最高裁第二小法廷平成24年3月28日決定>

 会社法116条2項に基づく株式買取請求権は、社振法147条4項所定の少数株主権に該当する。買取請求者の株主資格が争われた場合には、審理終結までに、「個別株主通知」がなされることを要する(最高裁第三小法廷平成22年12月7日決定)。
会社側が株主資格を争った時点で、振替機関による取り扱いが廃止されていたとしても同じである。
会社にとって、個別株主通知以外に権利行使要件の充足性を判断することは困難であるといえる一方、株主側は振替機関による取扱いが廃止されることは予想でき、速やかに個別株主通知の請求をすることが出来るので、このように解しても株主に過度の負担を課すことにはならない。
Xらは株式買取請求の基礎たる株式を失ったので、かかる場合は申立適格を欠く(同年8月4日、Y社が全部取得条項付種類株式の全部を取得したため、Xは同種類株式を失っていた)。

以上の理由で、Xらの申立は棄却された。

<検討>

 個別株主通知が振替株式の対抗要件であるという決定の趣旨は明確である。本決定は、最高裁第三小法廷平成22年12月7日決定を引用している。反対説も有力であったが、実務的にはこれで決着がついたといえよう。
株式買取請求をした株主が、その後同請求にかかる株式を失った場合は、申立適格を欠くとする点は最高裁の決定なので、今後の実務はこれに基づいて進めざるを得ないが、M&Aの実務としては矛盾をはらむこととなった。
すなわち、合併における消滅会社、株式交換、株式移転における株式買取請求では、請求者は、それぞれの効力発生日において消滅会社、完全子会社の株式を失うことになるが、にもかかわらず、価格決定申立権は失うことはない(会社法786条2項、807条2項)。
したがって実務においては、これら手続間の違いを明確に認識していることが肝要であろう。
また、本件の教訓は、公開買付と全部取得条項付種類株式をセットとしたM&Aの場合は、攻めるほうも守る方も迅速さが必要であり、かつ、社振法の存在を忘れないことであろう。ことに攻めるほうは時機を逸すると、基礎たる株式喪失とともに失権してしまうし、株券不発行会社においては、社振法による個別株主通知の申請を忘れると株主資格を主張できなくなるからだ。


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