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【第4章】 M&Aのスキームは多種多様

中小企業のM&Aの失敗の80%は、売り手のスキーム作りの未熟さによるものである。M&Aの成功のためには売り手側によるM&Aのスキーム作りが重要であり、それに対応できる買い手側の理解力も重要である。
M&Aのスキームは多種多様である。其の事案に最適のスキーム作りをするためには、高度な専門知識が必要である。
現実には、M&Aの仲介業者に資格が要請されていないので、M&Aは株式買い取りでやるものと決めつけて、それ以外のスキーム作りを考えもしないにもかかわらず、M&Aアドバイザリーを名のっている業者も多いので注意を要する。

1.完全子会社化をめざすM&A

(1)株式買い取りが原則

M&AのM部分はmergerであり、合併の意味である。ただ、中小企業のM&Aでは、合併の利用例は少ない。多いのは、株式を買い取って子会社化する株式の買取り方式である。
多用される最大理由は、手続きが簡略だからである。株式を、株主から、買い取るだけで済むからである。税金も、買い手に20%の譲渡税がかかるだけで、シンプルである。
また、合併だと、負債や損害賠償リスクなども承継してしまうので、倒産隔離ができる株式買取り方式が好まれる。子会社が倒産しても、親会社は倒産を免れるからである。さらに合併では、手続きが面倒なだけでなく、後述する税法適格となれない場合だと、評価換えによる課税関係が発生するので、その点からも避けられるのである。
ただ、株式買い取りの場合、100%買い取れるとは限らない。第一段階として、3分の2を取得することで、満足することも多い。3分の2を取得できれば、特別決議で勝てるので、一方的な定款変更等が可能となり、支配権を確保できるからだ。
残った少数株主の株式を強制的に取得するには、全部取得条件付き種類株式を使う方法(スクイーズアウト)があるが、その点は後述する。
また、3分の2以上の賛成を獲得できれば、後述する会社法上の株式交換の手段が使える。反対者には現金を交付すればよいのである。ただし、税法不適格となるので、どのくらい課税されることになるか、シュミレーションした上で、最も合理的な方法を選ぶべきである。税法上の適格性については、後述する。
株主全員が賛成すれば、株式買い取りでホールディングカンパニーの形成も可能である。反対者がいても3分の2の賛成が得られれば、後述の通り、会社法上の株式移転で、ホールディングカンパニーが可能となる。

<コメント>株式買い取りは事業譲渡より節税できる
株式売却は、株式の買い手に譲渡益の20%のキャピタルゲイン課税があるだけである。他の株式での損があれば、損益通算することも可能である。
ところが、事業譲渡だと、先ず譲渡した法人に譲渡益に対する法人税がかかる。次に、株主は配当として売却益を受け取ることになるが、配当所得として他の所得と総合して課税されるので、最高税率は50%になってしまう。
多くの場合、株式売却は、事業譲渡よりも税務的には有利である。

<退職金で節税>
株式を取得するとき、代金安くして、その金額にみあう退職慰労金でわたすという方法を使うと、全体的に節税できる。
ただし、退職慰労金をあまり高くしすぎると、否認され配当とされてしまうので注意を要する。最終月の月額報酬×役員就任年数×2,5ないし3位が上限である。

(2)株式交換による完全子会社化

M&A反対者がいてターゲット会社の株式を全部買い取れないが3分の2以上の株主が賛成している時には、会社法上の株式交換という制度を使うと効果的である。ターゲット会社での株主総会の特別決議により、その会社の株式を自社の株式と交換してしまえば、ターゲット会社の株主が自社の株主に成る代わりに、ターゲットは完全子会社になる。これにより買収完了となる。
反対の少数株主は、株式買取請求権を行使して離脱することができる。しかし、株式買取請求をしないと親会社に関係ない子会社の株主が入りこむので、株式に譲渡制限がある閉鎖会社では好まれないことも多い。もっとも、交換の対価として金銭も可能なので、株式の代わりに金銭を交付する場合にはよそ者を排除できるが、税法上不適格株式交換となり、課税関係が発生してしまうので、使いにくい手法である。
株式買い取りの資金がすぐ調達できない時にも、この株式交換を使うことも多い。閉鎖会社でも、子会社の株主が入りこむことを覚悟して、この手段を使うのである。
この場合、資金が用意出来たところで株式を買い取ればいいのである。買い取り時に反対株主が出現しそうな時には、あらかじめ、全部取得条項付種類株式を交付し、資金ができた時に特別決議で買い取るという手法を使うこともある。後述のスクウィーズアウトと言われるもので、これにより、確実に少数株主の株式を買い取ることが可能となる。
この買い取りで、ターゲット会社のオーナーは、創業者利益を確保できることにもなる。
中堅企業で公開会社になっているところは、手続きが公明正大となるのでこの株式交換を積極的に活用していいであろう。
また株式交換は、株式の買い取りに抵抗感のないグループ内再編では、完全子会社化を目指す時利用されることが多い手法である。

<実例>
山陰地方のM漁港地域の水産加工業は安価な中国産に押されて売り上げがじり貧状況となってきた。地元の商工会議所は、企業数を整理して生き残りを図る方針を決め、より強い企業が弱い企業を買い取ることをすすめてきたが、買い取る企業も買い取り資金を確保するのは困難なところが多かった。そこで、株式交換の方法で、買収対象企業の株主は、その株式を買収企業の自己株式と交換してもらって、一旦買収企業の株主になり、3−4年かけて、ゆっくりと買収側の企業の株主に、株式を買ってもらうというスキームを考案し、会員企業に奨励することとした。
同時に、買収対象企業と買収企業は、従業員をゆっくり整理し、生産設備を集約して、生き残れる足腰の強い企業体質を構築し、最後は合併して集約化を実現していった。

(3)ホールディングカンパニーの活用

ホールディングカンパニー、つまり、持ち株会社いうと、大企業のための制度と思いがちであるが、必ずしもそうではない。中小企業でも活用できるし、活用すべきものである。
合併や企業分割による統合をしたばあい、コンピューターシステムの違い、商品アイテムの違い、経営指針や社風の違いで混乱が生じ、統合効果が上がらないことも多い。この様な時、無理して統合せず、ホールディングカンパニーを作り、各社がホールディングカンパニーの完全子会社となるのが合理的なスキームである。
株式を全部買い取れれば、株式買い取りの方法でホールディングカンパニーの完全子会社に成り、手続は容易である。
一部の株主に反対があるという時には、会社法上の株式移転という手法を使う。この場合、ターゲット会社の株主総会で特別決議(反対株主は、株式買い取り請求権を持つ)を得て、株主とターゲット会社の間に持ち株会社が入る、つまり、当の会社の株主がホールディングカンパニーに移転し、ホールディングカンパニーの株式を持つこととなる。同時に、ホールディングカンパニーがターゲット会社の株主になり、ターゲット会社は、ホールディングカンパニーの完全子会社になる。
買収者側に資金がない時にも、この株主移転は効果的である。ターゲット会社の株主に、とりあえずホールディングカンパニーの株主になってもらって、資金が出来た時に、買い取ることになる。買い取り時に反対株主が出現しそうな時には、あらかじめ、全部取得条項付種類株式を交付し、資金ができた時に特別決議で買い取るという手法を使うこともある。後述のスクウィーズアウトと言われるもので、これにより、確実に少数株主の株式を買い取ることが可能となる。
ターゲット会社の株主に、ホールディングカンパニーの株式の代わりに、金銭その他の財産を付与してもよいが、株式交換の時と同じく税法不適格となり、ターゲット会社に課税関係が発生してしまう。
ターゲット会社の株主は、株式を買い取ってもらった時に、創業者利益を回収することになる。
この株式移転により合併までしなくても、共同仕入れ、在庫管理の共同化、店舗を整理し過当競争の排除、連携による相乗効果などの利益を享受できることとなるので、合理的な制度である。

<実例>
Aは、居酒屋チェーンを経営している若き実業家である。次々と、中小の外食チェーンを買収したが、それぞれのブランドはそのまま維持して傘下に収めていた。その手法は、ホールディングカンパニー方式を採用していた。
それぞれのチェーンの固定客を維持するのは、表面的には、オーナーがチェンジしたことが判らないようにするが、仕入れや、人材は可能な限り、共通化することが狙いであった。

(4)第三者割当増資も効果的

株主の中にM&Aについて反対者がいて株式の売却に応じないときには、買い手側が支配権を得るため、第三者割当増資をすることもありうる。
授権資本株式の範囲内では、有利発行でない限り、取締役会の決議で新株の発行が可能である。株主の過半数をM&A支持派が占め、取締役の人事権を握っている限り、この手法が効果を上げることとなる。
第三者割当増資は、M&Aと同時に、資本増強をして会社のテコ入れをする必要がある時にもつかわれるものである。

2.事業譲渡をめざすM&A

(1)事業譲渡はスタンダード

事業譲渡は、株式買い取りと並んで最もポピュラーなM&Aの手法である。必要な事業だけを取り出して譲渡できるので効果的なことが多いが、不動産、資産、債権債務、契約上の地位、知財、ブランドなどの承継手続き等を個別にしなければならないので手続きは面倒である。対抗要件も個々にする必要がある。リース契約だけでも膨大にあり、事務処理が煩雑を極めることが多い。
特許権の実施権には、事業譲渡による移転を禁止する条項(Change of Control 条項)があることも多いので注意を要する。
譲渡する事業が事業の全部、または重要な一部(事業全体の10%を超えなければ重要とはならないであろう)である時には、譲渡会社の株主総会で特別決議(反対株主に株式買取請求権がある)による承認が必要となる。事業全部の買い取りの場合は、承継会社でも特別決議が必要となる(反対株主に株式買取請求権がある)。
会社分割では、原則として株主総会の特別決議が必要になるが(反対株主に株式買取請求権がある)、必要な事業をまとめて承継できるので、事業譲渡より譲渡手続きは容易である。だが、係争リスク、例えば労使問題や製造物責任、損害賠償などの責任を承継する。その点、事業譲渡はリスクを切り離すことが出来る。ただ、商号を引き継ぐと、原則として債務も承継してしまうので気をつけるべきである。
事業譲渡では営業の許認可は引き継ぐことが出来ず、新たに申請しなければならないので、許認可の承継が必要な時には、やむなく会社分割などの他の手法に切り替えることになる。
雇用契約を引き継ぐかどうかは、当事者間で個別に決める問題であり、当然に、引きつがれるわけではない。
ところで、事業譲渡では、健全な部分を譲渡して残りを破産で清算するというケースも多い。この場合、譲渡自体を破産管財人により否認されることがあるので注意する必要がある。
事業譲渡には、会社法上の協業避止義務がある。原則として、同一、隣接市町村内において、20年間同種の事業ができないという競業避止義務を負うことになる。ただ、この期間や内容は、合意で加減が可能である。なお、他のM&A手法で競業避止義務を負わせたい時には、特別の規定がないので、特約が必要である。

<税金に注意>
事業譲渡すると、代金は会社が取得する。株主は、それを通常は配当で吸収することになる。ただ、この時、株主には所得税がかかるが、それは、累進課税で、地方税と合わせれば50%に達する。
税額をシュミレーションして高すぎると思えば、M&Aの手法を、株式の売却か会社分割に切り替えたほうが合理的ということも多いであろう。

(2)「居抜き」という古典的M&A

M&Aという言葉は90年代ころから一般に使われるようになった比較的新しい言葉であるが、これに類似する手法は、中小企業では古くからおこなわれてきた。それが「居抜き」といわれるものである。
テナントが入れ替わる時、レストラン、バーやクラブ、ホテル、旅館、瑕疵ホールのような業種では、新旧のテナント間で、内部の什器、備品ごと売却することが広く行われてきており、これが居抜きと呼ばれ、古くからおこなわれているものである。この時、従業員も再雇用して働き続けてもらうことも多く、こうなれば典型的なM&Aである。
M&Aという横文字の言葉に拒絶感を抱く者も少なくないが、居抜きという形で古くから行われていたことを理解できれば、アレルギーも解消するであろう。
ただ、居抜きは小規模な事業が対象であることが普通なので、従来の事業は閉鎖し、新たに事業者が旧設備を購入して新たに事業を開始したと扱って、事業譲渡として処理しないことも多い。この場合は、会社法上の事業譲渡に要求される株主総会の特別決議のような特別の手続きは不要となる。

(3)会社分割の活用

会社分割では、株主総会の特別決議で承認される必要があるが、個々の資産、債権債務、契約上の地位の移転が不要であり、必要な事業をまとめて承継できるので、譲渡手続きは比較的容易である。また、取引先の継続にも便利である。特別の手続きを経ずに承継できるからである。ことに、ブランドを承継できる時には効果的である。外から変化を感じられないようにできるので、顧客維持にも便利である。
許認可を引き継ぐ必要がある時は、事業譲渡でなく会社分割を利用する必要がある。事業分割では許認可は引き継がれず新たに申請しなおす必要があるが、会社分割では、届けるだけで承継できる業種が多いのである。
雇用関係は、事業譲渡では承継するかどうかは個別的に行われるが、分割では、承継される事業に「専ら従事している労働者」(兼業者ではない者)は、承継することになる(当の労働者がその承継に異議を出して、離脱できる)。その詳細は、労働契約承継法(会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律)(2001年)に規定されている。
会社分割では、係争リスク、例えば労使問題や製造物責任、損害賠償などの責任を承継することもあるので注意すべきである。
もっとも、会社分割だと、債務を分割会社に置き去りにする設計ができる。債務超過企業で、会社再建の一環として銀行債務は分割会社に残し、取引債務のみ承継するというスキームを見かけるが、後から、銀行から詐害行為として取消されたり、あるいは破産の否認権行使により、無効とされることも多く、そのような判例が頻発している。この点は、前述したが、銀行と敵対しての会社分割は、原則として無理と考えるべきであろう。

(4)不動産管理会社と事業会社の分離

バブルがはじけるまで、日本の企業は、利益が上がると不動産を買い、これを担保に金を借り新規投資の資金を得ていた。したがって、歴史のある中小企業は不動産を持っているのが普通である。
そのような企業が事業譲渡を考える時、不動産と事業を分離して、事業部分は事業譲渡か会社分割で第三者に譲渡し、不動産部分は残して、旧会社は不動産管理会社として家賃収入を得る会社として残るという、M&Aの手法がある。会社分割は、この時にあるものだといっていいほど効果的である。
同じことは、事業譲渡でも可能であるが、事業譲渡だと、個々の財産、権利関係、契約関係などを個別に譲渡することになるので、手間は大変である。ただ、債務や雇用関係を承継しなくても済むという利点はある。
今後継者が無く廃業を考えているような中小企業は、このようなM&Aがあることを、思い出してほしいものである。

3.合併の活用

合併は、多くは無いが中堅、中小企業でも利用される。規模の経済が求められるときには、最も、効率のよいスキームとなる。また、仕入れ、在庫管理を統合して合理化し、店舗を整理し過当競争を排除するなどが期待できる。
統合後は、両者の経営陣は、共同で経営に当たることを想定しているのが普通である。株式交換など、他の手法では、上下関係が出るので、その点からも合理的である。
しかし、合併だと、負債や損害賠償リスクなども承継してしまうので注意を要する。
また、税法適格となれない場合だと、評価換えによる課税関係が発生する。ただ、逆に利益の出すぎている会社が、欠損のある会社を吸収合併し、節税対策に使うという例は時々ある。
相手の会社の経営状況が悪いと債権者は不利益を被るので、債権者のためには異議手続きが認められており、株式を会社に買い取るよう請求できる。
ただ、合併や企業分割による統合をしたばあい、コンピューターシステムの違い、商品アイテムの違い、経営指針や社風の違いで混乱が生じ、統合効果が上がらないことも多い。合併による成果を上げるためには、綿密な準備が必要である。

<吸収合併がなぜ多いか>
合併には、吸収合併と新設合併がある。しかし、吸収合併が圧倒的に多い。
その理由は、まず、登録免許税が安いことである。吸収合併は、資本金増加額の1000分の1,5でよいが、新設合併では、新設会社の資本金の1000分の0,5となる。
第二に、合併では、消滅会社の営業の許認可が一旦消えるので、新設合併では新設会社が改めて取りなおさなければならない。吸収合併では、存続会社の許認可がそのまま継続する。
第三に、日本の合併では、対等合併を理想とする。合併後の融和が図りやすいからである。そのためには、弱い会社を敢えて存続会社にして、両者を可能な限り対等にしたいという必要があるからである。

4.中小企業のMBO

中堅、中小企業の場合、身内に後継者がえられないときには、会社内の役員、従業員を後継者にすることを考える必要がある。それは、まさに、MBO(Management Buy-Out)である。 MBOは、大企業のだけのものではない。
この時の大問題は、役員や従業員が株式を買い取れる資金を用意することが難しい点である。大企業の場合のように、この事業を担保に融資を得るというLMO(Leveraged Buy-Out)を展開することが不可能なことが多いのだ。
LBOは、大企業や公開会社では、買い手が、対象企業の資産や将来のキャッシュフローを担保に、ノンリコースローンで買収資金の全部または一部を調達することである。役員はSPC(特別目的会社)を設立し、ここで株を買い取り、投資ファンドがここに出資し、あるいは貸し付ける形を取ることが普通であるが、中堅、中小企業の場合は事業規模が小さく、この様なスキームをこなすだけの担保価値が無いことが多いからである。
となると、スポンサーを確保して、スポンサーとの共同事業として買い取るという例が多い。中堅企業のM&Aでは、ファンドがスポンサーとして関与することも見られる。が多い。となると、ファンドは、5年くらいすれば、株式を売却して離脱していくので、それを誰が買うのか、想定しておく必要がある。
ファンドでない時には、経営を任せてくれるものでないと、MBOの意味がなくなるので、注意が必要である。
なお、中小企業の実情としては、社内に後継者が育っていないことも多い。その時は、M&Aを考ええずに廃業を選ぶ中小企業も多い。しかし、それはもったいないことであり、社会的にも大きな損失である。そのときは、M&Aにより、今までの積み上げた実績を金に換えるということを考えてもらいたいものである。其のスキームは、本書で紹介する通り、様々な方法がありうるのである。
なお、上場企業のM&Aの場合、株価に影響を与える経営陣が当事者になるので、構造的に利益相反の状況がおこる。そこで、独立した第三者で構成される委員会を組織し、ここで、買収対価の金額を決めることが普通である。中堅企業のMBOの場合も、同じ配慮が必要なことが多いであろう。

5.病院や学校のM&A

病院や学校など会社以外の法人のM&Aも、基本的には、会社と変わらない。勿論、株式譲渡や、株式交換という会社法特有の制度はないが、基本的な手法は変らない。
診療所の場合、個人でもM&Aはありうる。ただ、これは、買い手は医師に限られ、かつそこでの新規開業の手続をとらなければならないが、設備等や患者については事業譲渡という形を取るM&Aが可能である。
医療法人の場合、合併という手法がありうるが、社団医療法人と財団医療法人は、法人の性質が根本的に異なるので、合併は不可能である。同種類の法人の合併であっても、都道府県知事(複数の都道府県にまたがる時は、厚生労働大臣)の認可が必要である。
従って、病院のM&Aは、出資持分の譲渡と、理事の入れ替えという手法を取ることが一般である。となると、持ち分の定めのある医療法人であれば、M&Aの処理は基本的のは会社と同じで、難しくはない。
しかし、持ち分の定めのない場合は、特別の工夫が必要である。基金拠出型であると、持ち分については、払い戻し時でも救出金しか戻らないし、財団医療法人や社会医療法人では、持ち分の観念が無いからである。売却の必要性と買い取りの必要性をすり合わせて、具体的な手法を検討することになろう。

6.税法上の注意点

(1)会社法上の合併、会社分割、株式交換、株式移転では、税法上、税法適格でないと、M&Aをする意味が薄れる。
適格であれば、資産は簿価で承継される。しかし非適格だと時価評価するので、譲渡益、譲渡損を計上し、課税されることとなる。欠損金の引き継ぎも出来ないこととなる。株主にも、キャピタルゲイン課税とみなし配当課税が生じてしまう。
株式交換は株式移転では、税法適格でないと、完全子会社の資産に評価益、評価損が発生し、課税関係が発生してしまう。
国際的な会計の流れは、時価主義であるパーチェス法を用いる。しかし、人格の承継なら簿価で引き継ぐのが素直であり、簿価主義である持分プーリング法で不思議ではない。だが、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」では、2010年4月1日以降、パーチェス法で処理することとなったので、税法適格は、企業グループ内か、共同事業要件を満たす場合だけに適用される例外的な扱いとなった。
したがって、税法適格となるためには、合併や分割対価が株式のみであること、事業に関連性があること、主要な資産、負債が引きつがれること、常務以上の役員が引き継がれること、従業員の80%以上が引き継がれることなどが必要で、その要件は厳しい。M&Aのスキーム作りの時には、この点を織り込んだ慎重な設計が必要である。

(2)事業譲渡は、税務上非適格な再編行為である。事業譲渡では、税法適格はなく、承継会社が譲り受ける財産、債務の受け入れ価格は、時価となる。そのため、対価が受け入れる事業の資産時価評価後の純資産相当額を上回る時、受け入れ会社に暖簾が発生することになる。暖簾は、税務上償却可能(損金参入可)である。

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