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【第10章】 M&A関連契約書の検討
1.契約書は千差万別

契約書は決まり切ったフォームがあり、それに書き込むだけで出来上がると信じている者はい多い。しかし、これは誤りである。確かに借用書や賃貸借契約書などは、内容は決まり切っており、この様な作成作業で困ることはほとんどない。だが、一般取引では、その取引内容は千差万別であり、対応する契約書も、それに合わせて千差万別なはずである。
ことにM&Aという取引では、取り決めるべき内容は複雑さを極め、かつ、その内容はケースごとに異なる。専門家がケースごとに、詳細な検討と整理の上作成する必要がある。
とはいえ、共通事項をベースにモデル契約書を作成し、契約書作成実務に役立てることは、有意義なことである。契約書作成の参考になるだけでなく、交渉段階で、何を取りきめるべきかを示してくれるものである。

2.アメリカかぶれの弊害

なお、M&Aの契約書では適用法が日本法であるにもかかわらず、アメリカの契約書をそのまま翻訳したような例にお目にかかることがある。大企業の法務部作成に多いのだが、アメリカのものは何でも日本よりも上であると信じている者がまだまだ多いことに驚かされる。日本は、ローマ法であり、コモンローの国とは法体系が異なる。例えば、いくら、Contractの形式を取っても、そのままでは強制執行が出来ないのだが、強制執行が出来ることを前提とした条項が平気で登場するまた、日本の契約技術では、項目で分けて、判りやすくする実務であるが、時々、長々としたアメリカ流の条文が登場することもある。
いずれにしても、盲目的な、アメリカかぶれは避けたいものである。、英米法と混同しないこと。
本章では、モデル契約書を提示しながら、M&Aで取り決めるべき事項を整理しよう。

3.秘密保持契約

秘密保持契約書の差し入れは、は、M&Aの交渉の最初のステップである。通常は、買い手が、売り手に差し入れて、対象企業の状況を検討するために差し入れるものである。合併や、業務提携では、互いに出しあうことになる。
双方で記名捺印する契約形式でもかまわないが、この段階では、まだ双方の代表者は顔を合わす段階ではないので、モデル契約にある通り、差し入れ形式が便利である。
秘密保確約書に期限を設ける例も多いが、秘密保持自体には期限が無いので、期限ではなく、受取書類の返還、廃棄について、明示するほうが合理的である。
以下は、差し入れ方式の一例である。内容は、中小企業を想定している。

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秘密保持確約書

4.基本合意書の検討

秘密保持契約書を取り交わし、お互いに必要な情報を提供しあって、マイナスの事情が生じない限りM&Aを成立させてよいとなると、基本合意書を締結することとなる。
基本合意書は、国際取引ではLetter of Intent である。
この段階では、M&Aの基本スキームができ上がっており、代金額も基本的に合意に達している必要がある。最終契約書とほぼ同様の事項を確認し合うこととなるので、その内容は詳細となる。
基本合意書作成段階では、事情を知っている者はごく一部であることが普通である。ことに売り主側では、まだ極秘である。従って、非上場企業では基本合意書が取締役会の了承のもとで行われることは稀であり、代表取締役レベルで締結されるのが一般である。従って、その後取締役会や株主総会で否決される可能性はありうることである。
ところで、上場企業の場合、金商法上のインサイダー取引の関係からすると、基本合意書の締結は、重要事実にあたるので、適時開示の対象となる。したがって、直前に、取締役会の決議を得て、締結し、速やかに、開示する必要があるであろう。
とはいえ、基本合意書は本契約ではない。デューデリジェンス以前なので、互いに本契約をするかどうかは未定であり、撤退の自由は確保しておく必要がある。互いに、損害賠償を請求しないという例も多い。
しかし、とはいえ、気まぐれに撤退されることは取引上の信義に反することになる。撤退するためには手付放棄、手付倍返しというペナルティーを科すことにすることもありうる。また、損害額の上限を課す例も良くみられる。
基本合意書の内容は、M&Aのスキームが、株式譲渡、事業譲渡、会社分割、合併、株式譲渡、株式交換などのいずれかで異なる。
以下では、活用例の多い株式譲渡、事業譲渡、合併のモデルを紹介しよう。

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5.最終契約の検討

デュ―デリジェンスの結果、特に問題点が発見されないとなれば、いよいよ本契約である。当然ながら、必要案事項はすべて織り込んだ契約の締結となる。
ただ、重要なことは、最終契約の締結は、それで解決というわけでないということである。通常は、取締役会の承諾は得ていても、株主総会の了承は得ていないし、従業員や取引先にはまだ伝えていないので、これら関係者から、反対されるリスクが残っているのである。
また、事業譲渡の場合は、個々の権利、財産、債務等の承継手続きが必要であり、やるべきことはたくさん残っている。合併、会社分割等では、債権者異議手続きや反対株主の株式買取り請求権などおクリアーしなければならないのである。
全ての事項が終了することをクロージングというが、最終契約からクロージングまで、まだ何が起こるか判らず、そのための規定を考えておく必要がある。

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6.株主多数が別の買主を希望すると?

フィデューシアリ―アウトというものがある。株主に対するフィデューシアリ―デューティ(Fiduciary Duty取締役の忠実義務)から白紙解約せざるを得ない場合を指す。もともと、アメリカやヨーロッパでのM&Aで問題視され、日本でも、問題点として意識され始めたものである。
M&Aのディスクロージャー後、更に有利な買い手が出現した時には、それがペナルティーを払ってでも株主に有利であれば、契約相手を変えられる権利である。欧米の契約にはこの規定がよく登場する。
実際、M&Aのスキームでは、最終契約をしても、その後、株主総会で特別決議による承認を得る必要があることが多い。つまり、この点では、M&Aは国同士の条約締結とよく似ている。条約も、政府間で締結しても、関係国の国会で批准されないと発効しないのである。
となると、株主の多数派が新たな買い手のほうを好めば、最初の買手とのM&A契約の発効が出来ないことになり、新たな買手を優先せざるを得ない。事前に多数株主の承諾を取っていない限り、フィデューシアリ―アウトに関する条項は重要となるのだ。
フィデューシアリ―アウトに関する条項には、株主多数の反対で契約が発効できない時に、いかなる形で原状回復をし、損害賠償をすべきかを記載しておく必要がある。
その時の条文例を、以下に紹介しておこう。

「甲社の株主総会で乙社との合併を否決し第三者との合併を承認した時には、甲社は乙社に対して、甲乙間の  年  月 日付合併契約書記載の代金の40%を、賠償金として支払う」

「甲と乙は、第O条で定めた誠実交渉義務と独占的交渉権に違反して、第三者と情報交換、交渉を行った場合には、相手に対して、第0条に定めた代金額の10%を損害賠償として支払う。第三者との間で、営業等の移転、承継、合併、分割にかかる取引につき合意に達した場合は、同代金額の20%を損害賠償として支払う。」

7.基本合意書での、独占交渉権違反とペナルティー条項の関係

基本合意書では、独占的交渉権の条項を入れておくのが普通である。しかし、この規定に反して、第三者とM&Aの交渉をし、そこと本契約をしてしまった場合、もとの交渉相手に対して損害賠償をどうするかは難問である。
これに対する裁判所の回答が出たケースとして、住友信託銀行対旧UFJ事件がある。
住友信託銀行と、UFJホールディングス、UFJ信託銀行、およびUFJ銀行は、平成16年5月21日、UFJ信託銀行の一定の営業等に関し、基本合意書を締結した。そこでは、「各当事者は、第三者との間で本件の合意書の目的と抵触し得る取引等に、かかる情報提供・協議を行わない」との独占的交渉権の条項があった。
ところがその後、UFJ三社は、UFJグループの窮状を乗り切るためには、本件基本合意書を破棄し、三菱東京グループ(MTFG)と統合する以外に道は無いと判断し、同年7月14日、基本合意書の解約を通告し、同時にMTFGに対し、経営統合を申し入れた。
住友信託はこれに対し、同月16日、東京地裁に対し、UFJ三社がMTFGと交渉するのは、住友信託の独占交渉権を侵害するものとして、平成18年3月末日まで、第三者との間で、営業等の移転、承継、合併、分割にかかる取引、業務提携にかかる取引に関する情報提供、または協議をすることの差し止めを求める仮処分命令の申し立てを行った。
東京地裁は、同年7月27日、申立てを認容する仮処分決定をした。UFJ三者はこれに対して、仮処分異議を出したが、同地裁は、8月4日、当該仮処分を認可する決定をした。UFJ三者は納得できずにさらに保全抗告をした。
東京高裁は、基本合意白紙撤回や本件仮処分で当事者間の信頼関係は既に破壊されているので最終合意に向けて協議を誠実に継続することを期待することは既に不可能として、東京地裁の決定を取り消し、仮処分決定を却下する決定をした。
これを受け、UFJグループとMTFGは、経営統合の基本合意をした。
住友信託は、東京高裁に抗告許可の申し立てを行い、同月17日、高裁は本件抗告を許可する決定をした。しかし、最高裁第3小法廷は同月30日、以下のように判示して、本件抗告を棄却した。
「独占的交渉権は、最終的な合意を成立させるための手段であり、社会通念上、最終的な合意が成立する可能性が存しないと判断される場合には、独占的交渉権の条項に基づく債務も消滅する。未だ流動的な要素が全くなくなったとはいえず、社会通念上、上記の可能性が存しないとまでは言えない。したがって、本件条項は、いまだ消滅していないと解すべきである。しかし、独占的交渉権は最終的合意に対する期待をするにすぎないものであるところ、本件では最終的合意に達する可能性は極めて低い。他方、差し止めが認められた場合、18年3月末日まで長期間拘束され、MTFG側の損害は相当大きい。したがって、保全の必要性は無い」との理由で、同年8月30日、仮処分命令申立を却下した。
仮処分が認められなかったため、MTFGとの合併交渉は順調に進み、平成17年10月1日、UFJ3社はMTFGと合併した。
仮処分とは別に、住友信託銀行は、UFJ三社に対して、2331億円の損害賠償を求めて訴訟提起した。平成18年2月13日の東京地裁判決は、最終契約が成立した場合の得べかりし利益と、独占交渉義務違反、誠実協議義務違反との間で相当因果関係は無いとして、請求を棄却した。その後控訴審で、MTFGが二五億円の解決金を払うことで、和解が成立して、最終解決がなされている。
このケースは、大銀行同士の合併に絡んだ仮処分申請と訴訟であったため、世間の注目を集めたケースであった。
注目すべきポイントは、仮処分自体は保全の必要性なしで却下されたが、最高裁が、「独占的交渉権は、最終的な合意を成立させるための手段であり、社会通念上、最終的な合意が成立する可能性が存しないと判断される場合には、独占的交渉権の条項に基づく債務も消滅する」とした点であろう。
これにより、独占的交渉権が消滅する道筋を示してくれたのである。今後の実務に、大いに参考になるはずである。
ところで、本件は、前述の、フィデューシアリ―アウトの条項が導入されていれば、裁判所で争われることなく解決した可能性は高い。とはいえ, フィデューシアリ―アウトとして、どのような条項を入れておけば、効果的かとなるとこれは難問である。今後の実務的な検討が待たれるところである。

8.MAC条項について

クロージングまでに想定外の重要な事情が明らかになることもまれではない。例えば、重大な簿外債務が発見されたり、期待していた特許に無効の可能性が出てきたりすることがある。その時にどうするかを決めた条項をMAC条項(Material Adverse Change)という。
これは、表明保証条項違反という形で登場することが多い。ただ、この解決は簡単ではない。簿外債務は、当人もほとんど意識していないことも多い。特許の無効は、晴天の霹靂というケースも多い。相手方当事者が、原因を作っていたり、損害の拡大の一端を担っているということも稀ではない。
大型のM&Aの契約書では、表明保証違反について、詳細なペナルティー条項が規定されていることが多いが、その内容が合理的か疑問なことも少なくない。裁判例を見ても、故意、重過失に限って責任を負わすということで、公平を図っている例も多い。
本書でのモデル契約書では、表明保証条項を簡潔に整理するとともに、故意、重過失に限って責任を負うという形で解決を図っている。

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