通貨オプション・fxオプション取引(為替デリバティブ)についての一般的商品説明
1 通貨オプション・fxオプション(為替デリバティブ)−その商品特性について−
通貨オプション・fxオプション(為替デリバティブ)という商品は、金融デリバティブの中でも、特にわかりにくい商品です。そこで、その商品特性を、なぜわかりにくく、なぜ危険であるかという観点から説明しましょう。
(1)通貨オプション・fxオプション(為替デリバティブ)とは
トラブル続出通貨オプション・fxオプション(為替デリバティブ)とは、通貨を一定の期日(権利行使期日)に、一定の価格(行使価格)で購入また売却することができる権利です。すなわち、「通貨を売買する権利」です。ドル通貨を購入できる権利を「ドル・コールオプション」、ドル通貨を売却できる権利を「ドル・プットオプション」と呼びます。
通貨オプション・fxオプション取引(為替デリバティブ)とは、通貨オプション・fxオプション(為替デリバティブ)を売却又は購入する取引を指します。
通貨オプション・fxオプション(為替デリバティブ)を売却する場合、契約時に対価(オプション料)を受領できる一方で、権利行使日には対象となる通貨を行使価格で購入又は売却する義務を負います。

今問題となる通貨オプション・fxオプション取引(為替デリバティブ)は、会社が銀行からドル・コールオプションを購入すると同時に、会社が銀行にドル・プットオプションを売却するという取引です。

そこで、ドル・コールオプションを購入する場合と、ドル・プットオプションを売却する場合に限定して、以下では説明します。
(2)『ドル・コールオプション』 と 『ドル・プットオプション』
≪会社がドル・コールオプションを購入する場合≫
この場合、銀行に対してオプション料を支払います。
ドル・コールオプションを購入した場合、権利行使日の為替レートが行使価格よりも高いときに、利益を取得します。具体的に示すと、1ドルを100円で購入する権利を購入した場合、権利行使日の為替レートが1ドル120円の場合、100円でドルを購入する権利を取得できます。そして、1ドル120円のものを100円で購入することができるため、差額の20円について利益を取得します。

通貨オプション・fxオプション(為替デリバティブ)の購入者である会社は、権利行使日の為替レートが不利な場合には、権利を行使しないことが可能です。この場合、会社の損失は銀行に支払ったオプション料相当額に留まります。会社がコールオプションの権利行使をしないのは、為替レートが行使価格よりも低い場合といえます。

≪会社がドル・プットオプションを売却する場合≫
この場合は、銀行からオプション料を受け取ります。
ドル・プットオプションを売却した場合、権利行使日の為替レートが行使価格よりも低いときに、損失を被ります。具体的に示すと、1ドルを100円で売却する権利を売却した場合、権利行使日の為替レートが1ドル80円の場合、100円でドルを購入する義務を負います。そして、1ドル80円のものを100円で購入しなければならないため、差額の20円について損失を被ることになります。

このように、ドル・プットオプションを売却し一定の金銭を受け取ったことは、会社が、将来の権利行使日の為替レート次第ではどのようになるか分からないドルを、行使価格で購入する義務を負うということを意味します。そして、このドルを行使価格で購入するという義務は、円高が進めば進むほど会社の損失が大きくなるという損失無限定のリスクに繋がるのです。

この点で、オプション料の限度に損失が限定されるコールオプションの購入の場合とは、リスクの程度が著しく異なります。

以上の通り、今問題となる通貨オプション・fxオプション取引(為替デリバティブ)の基本構造とは、会社がオプション料を支払って銀行からドル・コールオプションを購入すると同時に、会社が銀行からオプション料を受け取って、銀行にドル・プットオプションを売却するという取引です。
そして、この通貨オプション・fxオプション取引(為替デリバティブ)を基本形態として、さらに種々のオプションが付されているのです。 次に、この種々の特約についてご説明します。
(3)通貨オプション・fxオプション取引(為替デリバティブ)のオプション設定について
1. レシオ特約
  通貨オプション・fxオプション(為替デリバティブ)という詐欺商品レシオとは、会社が銀行から購入するコールオプションの取引金額よりも、会社が銀行に売却するプットオプションの取引金額を二倍または三倍に設定する契約をいいます。なお、以下では二倍に設定された場合に説明を限定します。

レシオの特約が設定されるのは、会社がより“価値の高いコールオプション”を購入することができるようにするためといえます。この“価値の高いコールオプション”とは、行使金額が低めに設定されたオプションを意味します。すなわち、会社は、銀行に売却するプットオプションの代価で、銀行からコールオプションを購入するのです。
ところが、会社が銀行に売却するプットオプションの取引金額を多く設定することにより、会社はそれだけ多く銀行からプットオプション料を対価として受け取ることができます。
そこで、会社はその得た対価を用いて、より価値の高いコールオプションを購入することができるのです。

レシオ特約の問題点とは、会社が、銀行により多いプットオプションを売却することになることから、銀行が権利行使をする際には多くのドルを購入する義務を負うため、それだけ多大の損失を被ることになる点です。
すなわち、会社は、プットオプションを売却したことにより、銀行からドルを売りつけられるが、レシオ特約により二倍量のドルを売りつけられるのです。
しかも、銀行がプットオプションの権利を行使する場合というのは、権利行使日の為替レートが行使価格よりも低い場合です。先の例で示すと、会社から見ると1ドル80円のものを100円で購入する義務が生じ、銀行から見ると1ドル80円のものを100円で売却する権利を取得するため、差額の20円について会社は損失が生じ、銀行には利益を取得するのです。
これにレシオの特約が付されることで、会社に生ずる損失は、レシオの倍率の2倍の損失が生ずることになります。

2. ギャップレート特約
  ギャップレート特約とは、行使価格とは別に権利義務の発生を判定する判定価格を設け、判定価格に到達した場合、行使価格を支払うことになる特約です。
たとえば、1ドル100円になると、会社は1ドルあたり110円で買取らなければならない場合、1ドル100円になることが判定価格であり、行使価格110円と乖離があることになります。
ギャップレート特約を締結するのは、会社がより価値の高いコールオプションを購入できるようにするためです。
すなわち、上記の1ドル100円になると、会社は1ドルあたり110円で買取らなければならないとする特約を締結した場合、この特約は、1ドル100円のものを110円支払って買取らなければならないことになるため、会社にとって不利といえます。
そこで、会社は自己に不利となる特約の付いたプットオプションを銀行に売却するので、そのプットオプションの価格は高くなります。
その場合、会社はそれだけ多くのプットオプション料を銀行から受け取ることができます。そこで、会社はその多く得た対価を用いて、より価値の高いコールオプションを購入することができるようになります。

ギャップレート特約の問題点として、上記の1ドル100円になると、会社は1ドルあたり110円で買取らなければならないとする特約を締結した場合、市場で取引すれば1ドルについて100円で購入すればよいところ、1ドルについて110円で購入する義務が生ずるため、1ドルについて10円の損失を被ることになるという点です。
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M&A・事業再生の弁護士-金子・福山法律事務所